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navigate_next【Venture Debt Library#2】ベンチャーデットの存在意義とは― 誕生背景から近年の市場変化まで(後編)
2026/01/23
Venture Debt Library

こんにちは、Funds Startups代表の前川です。
Funds Startupsは、「社会的インパクトを創出するスタートアップが、最も理想的な成長を遂げられる仕組みを開発する」をミッションに据え、現在Funds Venture Debt FundのGPとして、ファンド運営ならびに金融機関へのベンチャーデットに関する支援を中心に行っています。
また、デット市場のさらなる普及と透明性の向上に向けて、note を通じて Venture Debt に関するさまざまな情報を継続的に発信していく予定です。
前回の記事では、ベンチャーデット(VD)の存在意義を改めて振り替り、その誕生背景を解説しました。
過去記事
【Venture Debt Library#1】ベンチャーデットの存在意義とは― 誕生背景から近年の市場変化(前編)
本稿では、昨今のマクロ環境を踏まえた市場変化・最新トレンドとして、2026年以降の「ベンチャーデット」の発展可能性について、お届けしたいと思います。
目次
「ベンチャーデット」の発展可能性
1. IPOを目指すスタートアップ
2. M&Aを目指すスタートアップ
3. セカンダリ等を駆使し、自己資本経営を目指すスタートアップ
最後に
「ベンチャーデット」の発展可能性
2025年を振り返った際に、スタートアップにとって大きな地殻変動となったのが東証主導の上場市場改革プログラムにおいて、グロース市場を中心として上場維持基準の見直しが行われ、結果として従来から多く散見された所謂"スモールIPO"が、実質的に許容されない手段(※できない訳ではない)へと変化したことであると考えます。その変化も背景に、12月には政府から「スタートアップ向けM&A指針策定」という見出しで、出口戦略を多様化することを目的にM&Aを促進する動きが始まっています。
このような地殻変動を背景に、今後の発展可能性に題して、Exitパターンから見たベンチャーデットの活用可能性について触れたいと思います。
1. IPOを目指すスタートアップ
今後IPOをExitに目指す場合においては、従来以上にサイズアップした状態でIPOを準備する必要があります。その結果としてグロース、スケールアップフェーズが長期化すると予測され、結果として当該ステージの資金供給のニーズが強まるものと考えられます。また、当該フェーズは一定の事業が確立しているステージ(であるがまだ赤字、成長発展段階であり、プレーンな融資とは距離がある)であることからも、汎用的にベンチャーデットの活用可能性が高いエリアです。
また、グロースステージにおいて既存事業のスケールアップを目指した更なる既存投資に加え、非連続な成長を遂げるために、レイタースタートアップによるM&Aがより積極的に行われるようになると考えられます。特に買収対象会社が黒字である場合には、買収対象会社の信用力を生かしてデットを活用することで、資本効率を高めることが可能です。ただし、買い手企業自体が成長発展段階のスタートアップであるという信用力の不足感、およびその信用力で買収できる企業規模をリアルに考えると、伝統的なLBOローンを活用できるシーンは限定的です。そのような狭間において、ベンチャーデットを活用できるシーンは多々あると考えられます。
2. M&Aを目指すスタートアップ
殆どのケースにおいてIPOを前提としたValuationかつ優先株式による株価によって定められた直近プライスと、事業会社等が提示するM&Aの提示価格には大きな乖離を生まれます。そのような条件下において、株主であるエクイティ投資家と合意するためには、少なくとも累計エクイティ投資額の1.0x以上を返す売却価額には持っていくことを期待されるのも一般的です(※なお、その上で経営陣にキャピタルゲインが回るには、当然それを上回る売却価額を目指す必要があります)
この構造を考えると、M&Aを志向する資本政策においては、Valuationもさながら、出口のValueと比較したエクイティ調達額(資本効率)をよりシビアに考える必要があると言えます。このような場合、伝統的なバイアウト投資にも近い発想ですが、可能な限り小資本でレバレッジをかけて企業価値を高めていくアプローチが求められ、そのレバレッジを担う資金供給としてベンチャーデットの活用可能性が高まると考えられます。
3. セカンダリ等を駆使し、自己資本経営を目指すスタートアップ
2025年は「セカンダリ市場解禁の元年」とも言えるように、レイター段階でVCのファンド満期を理由としたセカンダリディールニーズが急増し、それに呼応するような形で、相対取引によるカクテルディールのプラクティス増加、セカンダリファンドの拡大、ダイレクトセカンダリ事業への参入者増加といったニュースを多く観測しました。記事前半でも触れた通り、国内のVCは特に2013年以降から急激に増加したこともあり、原則としてファンド満期は10年(+2年)であるため、2025年以降は急激に増加したVCのファンド清算ラッシュが継続されることは間違いありません。
このような投資制約を背景に、持続可能な出口戦略について業界全体でも考える必要がありますが、仮に自社が既に利益創出している、自己資本を厚く持っている等で、自己株買いの財源規制をクリアできる場合には、会社が流動化ニーズのある既存株式を買い取ることや、この構造に一定の担保的価値を設定し、経営者が買い取る疑似的MBOのような動きもあり得ると考えます。このような場合に、自己株買いの原資となる資金としてベンチャーデットを活用する、というパターンもあり得るかもしれません。
また、資本構成をリストラクチャリングする中で、事業が堅調に進捗しているのであれば、他人資本における負債比率を徐々に高め、WACCを下げるとともに経営の自由度を高めていく、という動きも取り得るでしょう。このようなSpecificなストラクチャーや、自己資本経営に切り替える中において、そのトランジションファイナンスとして、ベンチャーデットの活用性を見出すことも十分に可能であると考えます。
最後に
ベンチャーデットは急激な成長を見せ、プレイヤーも増加する中で市場形成も進み、一部のシーンでは本流化するようなプラクティスも出てきておりますが、まだまだ業界全体としてのベストプラクティス創出、活用の最適化、という点では実績が少ない側面も否めません。
そのような中で、本投稿が少しでも本質的な資本政策を考える中で、ベンチャーデットの活用および自社における最適解を考えるきっかけになれば幸いです。
少し話は変わりますが、スタートアップの政策検討や業界団体レポートでは、よく「レイターの資金供給が圧倒的に足りていない」という課題設定がなされており、これは間違いないと感じておりますが、その不足を補うファイナンス手段が日本の場合には必ずしも "エクイティ" がピッタリ来るかは個人的に議論の余地があると考えています。
資本コストと期待リターン、Exit選択肢を持つためのエクイティマネジメント、未上場段階における流動化機会が敷設あれた後の市場を見据えた経営自由度の獲得等、従来では良くも悪くも、入口も出口も1つの答えしかほぼなかったことから一辺倒的な考えでも一定は成立していましたが、直近では"選択肢がある市場"に発展し、それゆえにスタートアップも画一的な考えではなく、選択肢をどう組み合わせて、自社にとって最適な資本政策を構築するか、という戦略設計、マネジメントが求められているように感じます。
Funds Startupsは、一義的にはベンチャーデットファンドとして、ベンチャーデットを手段とした最適資本の供給ならびに環境構築を推進しておりますが、さらに上位概念としては「スタートアップ専門の投資銀行」というテーマを設定し『社会的インパクトを創出するスタートアップが、最も理想的な成長が遂げられる仕組みを開発する』というミッション念頭に、スタートアップにアラインした金融環境の敷設を目指して活動しております。
今回のテーマに関して、資本政策の壁打ちから、ベンチャーデットの資金調達相談までお気軽にご連絡いただけますと幸いです。ここまでご覧いただき、誠にありがとうございました!
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