ディープテックをオールフェーズ支援で、最適な成長軌道に乗せる。Funds Startups が「2号ファンド」にかける思い

2026/07/10

Interview

社会的インパクトを創出するスタートアップが、最も理想的な成長を遂げられる仕組みを開発するー。

そのミッションを携え、2023年12月に生まれたのが、ベンチャーデットを運営するFunds Startupsだ。2024年3月には、第1号ファンドとして「金融機関共同研究型ベンチャーデット・ファンド」を立ち上げ、ディープテックをはじめとするミドル・レイターステージのスタートアップに対して投融資を実行。

累計16社に対して約41億円を投資し、現在約38億円を運用している。

しかし、「スタートアップの理想的な成長をとげるための仕組み」を作るためには、まだ一歩を踏み出したにすぎない。スタートアップへの投融資を実行するなかで、様々な課題も見えてきた。

企業によって、事業内容、成長フェーズ、必要資金額、資本政策、資本コスト、そして目指す出口戦略。企業ごとに置かれた状況は大きく異なり、求められる資金も一様ではない。そのため、スタートアップが「理想的な成長」を遂げるためには、資金供給側の選択肢を拡大する必要がある。

特にディープテック・スタートアップは、研究開発から社会実装までに長い時間と多額の資金を必要とする一方で、資金調達の選択肢は限られている。

では、Funds Startupsはその課題をどう捉え、乗り越えようとするのか。代表の前川寛洋を中心に、パートナーの小島崇小原満美プリンシパルの鈴木紳平から、1号から見えてきた課題と、2026年6月に発表した2号ファンドへの思いをお届けする。

目次

  1. 1号ファンドから見えてきた、ディープテックのディープな課題

  2. 資本コストを再構築し、ディープテックが全集中できる世界へ

  3. 100億円、シームレス、ハイブリッド。

1号ファンドから見えてきた、ディープテックのディープな課題

──まず、1号ファンドの2年間を振り返ってください。

小島 2024年にスタートした1号ファンドでは、「金融機関共同研究型ベンチャーデット・ファンド」として、ミドル・レイターステージのスタートアップに対してベンチャーデットを提供。16社で約41億円の投資を実行しました。

ファンドにご出資いただいた地方銀行や大手銀行からは、経済的リターンだけでなく、スタートアップ戦略の補完、スタートアップとの新たな接点創出や、ベンチャーデット推進にかかる知見獲得という戦略的リターンも含めて高く評価いただきました。

四半期ごとの情報共有や投資委員会へのオブザーバー参加など、コミュニケーションの質と量を意識的に高めた結果、「非常に満足している」というフィードバックをいただくことが多かったです。

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──一方で、1号を通じて見えてきた課題はありましたか?

小原 特に、ディープテック企業と向き合う中で感じたのは、「商用化の直前で資本政策が苦しくなっている企業」が少なくないことでした。

ディープテックでは研究開発期間が長く、実証実験や量産化準備にも多額の資金が必要になります。そのため、研究開発段階ではエクイティ調達が中心になりますが、それを重ねることで希薄化が進み、ようやく商用化が見え始めたタイミングになったのに、追加の成長資金を調達しづらくなってしまうケースがあります。

本来であれば最も事業が伸びるタイミングであるにもかかわらず、資本政策上の制約が成長の足かせになってしまうのです。

前川  1号を通じて痛感したのは、こういったディープテックの資金調達課題を包括的に解決できるプレイヤーが国内にいないということです。

昨今は政府からの支援も強化され、研究開発フェーズのような早い段階からエクイティに合わせて補助金を活用できるようになってきました。これはディープテック企業にとってとても良い傾向です。

一方、現場のディープテック企業の声を聞くと、補助金、エクイティ、デットと、それぞれの仕組みは存在していますが、それらは個別最適化されていて、企業側からすると複数の資金提供者や制度の間を行き来しなければなりません。

例えば、ある医療機器のスタートアップでは、自社で研究開発をした医療機器を販売するまでに100億円近い資金が必要でした。

その規模感で、一つひとつのファイナンスを別々のプレイヤーと交渉していたら、経営者や研究者の時間とエネルギーがどれだけ奪われるか。根本的な課題は、もっとアーリーやシードの段階から積み上がっており、1号の守備範囲だけでは解決できないと痛感しました。

──2号ファンドは、その課題を解決するために立ち上げると?

前川 一番の動機は、ディープテックの研究者・経営者に、ファイナンスを心配することなく、研究開発に集中してほしいということです。

例えば、補助金や助成金は入金サイクルが長く、後払いが基本となっています。数十億の補助金が採択されたとしても、まずはコストが先行して出ていくわけです。

その資金繰りの憂いを抱えたまま、本当に基礎研究にフォーカスできるかといえば、そうではない。

補助金には事業途中でも受け取れる「概算払い」という仕組みもありますが、その申請書類提出に追われて、貴重な研究時間が奪われているケースも現実にある。

アメリカのディープテックは、ランウェイ36ヶ月分を一気に調達するのがスタンダードで、当然企業はその期間研究に集中できます。

日本がどれだけ優れた技術を持っていても、産業化のスピードで負け続ければ、将来的な経済成長にも、社会課題の解決にも遅れが生じる。そして、スタートアップ市場がシュリンクすれば、リスクマネーが供給されなくなり、さらに他国の後塵を拝することになる。

そのギャップを金融の力で縮めたい。それが2号ファンドを作った根源としてあります。

──マクロ環境の変化も背景にあると聞きました。

前川 グロース市場の上場維持基準の見直しなどを機に、そのゲームルールが変わりつつある。M&Aや自己資本経営を目指す会社も増えてきました。

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IPOだけに向かわせるエクイティ一辺倒のファイナンスでは、今のスタートアップの多様なあり方を肯定しきれない。

デットは、M&AであろうとIPOであろうと、経営の進む道を制限しないファイナンスです。だからこそ今の時代に、デットの役割が増しているんです。

資本コストを再構築し、ディープテックが全集中できる世界へ

──具体的に、2号ファンドのコンセプトを教えてください。

前川 2号のコアにあるのは「資本コストの最適化」だと考えています。

ディープテックは必要な資金量が圧倒的に大きい。先ほどの医療機器のスタートアップのように、商用化に至るまでに100億円近い資金調達を要するケースもあります。その資金をすべてエクイティで賄うと、最終的に創業者や研究者の持ち分が5%にも満たなくなることがある。

これは、資金調達をするスタートアップ側だけの問題ではありません。

資金供給側であるVCの持分も同様に希釈化し、仮にIPOやM&A等に至れたとしても実際に得られるリターンは僅かになるという課題にも繋がります。一つのベンチマークとして国内VCファンドの中央値リターンが、15年(※通常は10年の期間で5年延長)かけてもマイナスという現実もあります。これを単純解釈すれば、どんどんリスクマネーが供給されなくなる。

VCファンドは、インデックス投資をする訳でもないので、当然大きく勝つファンドがあれば、大きく負けるファンドもあります。

VCというアセットクラス自体にパワーローの力学が働き、市場全体で勝っていれば良いとは思うのですが、日本は米国ほどに企業価値で圧倒的に突き抜けるスタートアップはそう多くありません。

ゆえに、パワーローによるホームラン回収型を単純に考えるよりも、もっと資本政策に技巧を用いて、市場全体の資本効率を追求するほうが勝ち筋があると考えます。

もっと歴史の長いPEファンドの世界でも、リターンを少しでも高めるために投資以外のファイナンスの技巧を凝らしている訳であり、VCにおいても当然に検討すべきでしょう。

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私たちは、スタートアップの参加者全員が、きちんと儲かる仕組みを作らないといけないと思っています。経営者や研究者のキャピタルゲインがなければ、人生をかけてやる動機が失われる。それに投資するVCのGPも同じです。

リスクマネーを出す投資家が報われなければ、次のリスクマネーが市場に入ってこなくなる。これが続くと、エコシステム全体が痩せ細っていく。その悪循環を断ち切るために、市場全体の資本効率の設計を根本から変えたい。

たとえば、実用化に向けた研究開発フェーズなら、補助金つなぎとしてデットファイナンスを使う。技術や量産化の実証フェーズならCB(転換社債)、市場投入フェーズならSO付きのベンチャーデットという形で、それぞれのフェーズに合わせた資本コストを提案できれば、希薄化を抑えながら必要な金額を集められる。

それを下地だとしたときに、さらに大きく伸びる領域に満を持してエクイティを投入していくことで完成する。そのような相互作用の循環を作りたいと考えています。

2号ファンドを一言で表すなら「オールステージ・ディープテック・デットファンド」です。

スタートアップ、特にディープテックの各成長段階の課題を解決するために、ファイナンスをもっとサイエンスにしていく。そのスタンダードを、僕らがリードして作っていきたいと思っています。

鈴木 たとえば「補助金つなぎ」も、もっとサイエンスする必要があります。従来の金融機関でも補助金つなぎに対応するケースはあるのですが、商用化前の状況では赤字や債務超過であることも珍しくないため、プロパー融資は難しいケースが多い。

信用保証協会を利用できる範囲で取り上げても、1〜1.5億円が上限となることが多いと見受けられます。

一方で、例えばNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が運営するディープテック・スタートアップ支援事業(DTSU)では、革新的な技術を対象に最大で1件あたり30億円の大規模な支援を行うケースもあります。

つまり、10億や20億規模の補助金のためのつなぎが必要なわけです。そのため、今のままでは供給が圧倒的に足りない状況です。

ただ、補助金に採択されたから安心というわけではなく、事業の進捗によっては採択自体が後から取り消されることもありますし、事業に正しく支出されていないと減額支給になることもある。

採択された企業の補助金制度に対する理解や管理体制など、個別に深く見ていかないと、危ない橋を渡ることにもなりかねません。だからこそ我々のような専門プレイヤーが入る意義があります。

100億円、シームレス、ハイブリッド。

──実際にどのように運用していく予定ですか?

前川 1号がミドル・レイターのみを対象にしていたのに対し、2号はアーリーから対応できる。補助金つなぎ融資、CB、ベンチャーデットという3つの投資手法を一つのファンドで組み合わせていきます。

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──3つの手法をどう使い分けるのですか?

小島 研究開発フェーズのスタートアップに対しては、大型補助金が採択されたタイミングで、希薄化が発生しない補助金ブリッジファイナンスを提供します。このファイナンスは、金融機関からの借入コストと同等水準で提供します。

技術実証フェーズで、技術的なマイルストーンを乗り越えつつあるスタートアップにおいては、極力希薄化を避けながら資金調達をしたいというニーズがあります。

そのため、転換価額に将来株価を参照するようなCBを引き受け、希薄化を抑えたファイナンスを提供することを考えています。

これは事業が想定通りいけばエクイティに転換するため、スタートアップから見れば債務としての返済必要性はなくなり、Funds Startups にとっては大きなアップサイドの機会となります。

そして市場投入フェーズのスタートアップに対しては、1号ファンドで実績のあるベンチャーデットを提供することで、更なる成長を後押しします。また、それに続く本格拡大フェーズに到達したバンカブルなスタートアップに対しては、ファンドにご出資いただく銀行にトスアップします。

この様に、2号ファンドでは複数のファイナンス手法を提供すること、そしてLPを中心に日本全国のスタートアップ支援に積極的な金融機関と連携することで、スタートアップの成長をシームレスにご支援できると考えます。

前川 ディープテックに早い段階から関わることには、投資戦略上の意味もあります。ディープテックの有望性が市場に伝わる最初のシグナルが、大型補助金の採択だったりする。

そのタイミングから関わることで、事業が拡大する前段階から彼らのことを深く知れる。本当に伸びる会社には、次のCBやベンチャーデットもシームレスに提案できる。ファイナンスの分断をなくすことが、会社の成長速度を上げることに直結します。

──ファンドのサイズ感も教えてください。

前川 最終目標は100億円で、国内最大級のベンチャーデットファンドを目指しています。

今回、国内最大手銀行である三菱UFJ銀行にアンカー投資家として参画いただきました。同行が国内のベンチャーデットファンドに出資するのは、今回が初めての事となります。

では、なぜこのタイミングで本ファンドへの出資を決断したのか。その理由は、今や国策ともいえるディープテック・スタートアップ成長支援に欠かせないピースとして、本ファンドの意義に共感いただいたからだと理解しています。

──投資規模も範囲も広がると、これまでよりもスピードとクオリティの両立がさらに求められそうです。

鈴木 まず、補助金つなぎのファイナンスの場合、対象を絞っています。NEDO、SBIR(中小企業技術革新制度)、宇宙戦略基金、AMED(日本医療研究開発機構)、防衛省関連など、大型かつ、厳格な審査プロセスを要する補助金にまずは限定します。

補助金の審査に通ったこと自体が、技術の革新性や研究体制整備の一定の担保になっているので、我々は主に資金繰りにフォーカスして審査できます。

さらにAI活用によるデューデリジェンス(DD)の効率化も進めていて、1次DDのドラフトを自動生成できる仕組みも整えています。

──とはいえ、ディープテックは予見性が低いという課題もありますね。

前川 そこは非常に重要な論点で、だからこそ外部アドバイザーの力を積極的に借りています。VCのGPや、ライフサイエンスや工学系のPh.Dを持つ専門家、バイオ分野に知見のある外資系製薬会社およびVC経験者、補助金採択委員経験者など、ディープテックの各分野の第一線にいる専門家に審査に入ってもらっています。

技術の実現可能性や社会実装までのタイムラインの評価は、金融バックグラウンドだけでは到底判断できません。僕らが本当に強いのはファイナンス設計ですが、技術評価の部分は各領域のプロとチームを組む。

そのハイブリッドな体制が、ディープテックに特化したファンドとして不可欠だと思っています。

──チーム体制についても教えてください。

前川 2号は本当にチーム全員で作ったファンドです。小原さんがディープテック・スタートアップやVCに数多くヒアリングして見えてきた課題があり、鈴木さんが補助金つなぎ融資などの金融ストラクチャーを設計し、小島さんが全体のウィングを見ながらLPとの対話を重ねてきた。

そして、CFO、VC、PEファンド、銀行、証券、M&A仲介、弁護士、各分野のPhD——それぞれの知見CB・ベンチャーデットの3つを一つのファンドで提供するのは独立系ファンドとして前例がほとんどなく、だからこそGPへの信頼が問われる。

それに応え続けることが我々の使命です。

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──どんなスタートアップに使ってほしいですか?

前川  社会的インパクトのある挑戦をしているスタートアップに、ぜひ我々のリスクマネーを使い切ってほしい。

特に必要資金量が大きい会社こそ、資本コストを真剣に考えてほしい。エクイティを使うべき場面とデットを使うべき場面を正しく区別するだけで、経営者や研究者の手元に残るキャピタルゲインは大きく変わります。

それは個社の話ではなく、エコシステム全体に返ってくる話でもある。スタートアップが正当に報われる仕組みを作ることで、次の挑戦者が生まれ、リスクマネーが循環していく。その流れを作ることが、僕らの本当の目標です。

小原 特に研究開発フェーズなどでは、まだ財務に詳しいメンバーが社内にいない事もあります。「エクイティは返済しなくてよいから得だ」と捉えられることもありますが、実際には希薄化という形でコストを負っています。

もちろんエクイティが必要な局面はあります。ただ、すべてをエクイティで賄うのではなく、補助金ブリッジ、CB、SO付きベンチャーデットなどを適切に組み合わせることで、創業者や研究者、既存株主にとってより望ましい資本政策を設計できるはずです。

私たちは、単に資金を提供するだけでなく、我々自身が資本コストの「スタンダード」を市場に浸透させていく責任があると思っています。そのためにVCや金融機関、事業会社などのステークホルダーとも連携しながら、ディープテック企業が研究開発と社会実装に集中できるエコシステムを作っていきたいです。

<STAFF>
インタビュアー:海達亮弥、水野綾香(Funds)
デザイン:濱川和宏
執筆:海達亮弥(Funds)

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