【Venture Debt Library#5】調達準備編:スタートアップが活用できる法人融資の選択肢 

2026/02/24

Venture Debt Library

こんにちは、Funds Startupsです。
Funds Startupsは、「社会的インパクトを創出するスタートアップが、最も理想的な成長を遂げられる仕組みを開発する」をミッションに据え、現在Funds Venture Debt FundのGPとして、ファンド運営ならびに金融機関へのベンチャーデットに関する支援を中心に行っています。

また、デット市場のさらなる普及と透明性の向上に向けて、 Venture Debt に関するさまざまな情報を継続的に発信しています。

【Venture Debt Library】調達準備編は、将来的にデットの調達を検討しているスタートアップの調達準備を支援するシリーズです。

過去【Venture Debt Library#3&4】調達準備編:最適資本経営とは?にて寄稿した通り、デットは単なる「資金繰りの手段」ではなく、経営の自由度や資金調達条件を左右する重要な資本政策の一部です。

【Venture Debt Library#3】調達準備編:最適資本経営とは。スタートアップは、なぜデットを活用するのか?(前編) ┃ FSコラム ┃ Funds Venture Debt Fund ┃ Funds Startups株式会社

Venture Debt Library#4】調達準備編:最適資本経営とは?スタートアップは、なぜデットを活用するのか?(後編) ┃ FSコラム ┃ Funds Venture Debt Fund ┃ Funds Startups株式会社

本稿では、意外に知られていない、【スタートアップにとって利用可能なデットの種類や、ステージごとの使い分け】などを解説いたします!

デット(融資)とは何か?

そもそもデットとは何か?調達に向けた最初の1歩として、改めて基本構造を理解していきたいと思います。
デットとは、将来返済することを前提に調達する資金の総称であり、一般的には「融資」「社債」などがこれに該当します。
エクイティ(株式発行)との決定的な違いは、原則として返済義務があるが、希薄化を伴わない点です。

デットの基本構造

デットは、原則として以下の要素で構成されます。これらはデットを調達する際に必ず現れる論点であり、調達コストだけでなく、資金繰りの安定性、経営の裁量、次回の資金調達に影響します。そのため、借り手側にとっては各要素を個別に、かつ総合的に理解することが重要です。

  • 元本:借り入れた資金の金額

  • 金利(利息):資金を借りる対価として支払うコスト

  • 融資期間・返済方法:借入期間および元本の返済スケジュール(分割返済・一括返済等)

  • 資金使途:借入た資金を何に使うか(限定される場合あり)。

  • 担保・保証:返済不能時に備えた回収手段や信用補完。担保には不動産、動産、債権、知的財産等があり、保証には代表者保証や第三者保証などがある。

  • 期限前償還:借入期間満了前に元本を返済すること(条件や一定のフィー支払いを伴う場合あり)

  • 財務制限条項(コベナンツ):借り手の財務状況や行動に関する制約条件

ベンチャーデットでは、これらの基本要素に加え、SO(新株予約権)を貸し手に付与する事で、資本コストと希薄化のバランスを戦略的に設計することができます。

法人が利用できるデットの主な種類

次にどのようなデットが利用できるのか?という点について、主な種類・利用ステージや特徴等について、以下のように整理できます。

画像

それぞれについて、利用シーンや特徴などを解説していきます!

①無担保融資(銀行プロパー融資)

プロパー融資は最も普及しているデットの調達方法であり、銀行が借り手のリスクを直接負います。言い換えれば、企業の信用力や事業内容をベースに銀行から資金を借りる事になります
そのため、財務実績や安定したキャッシュフローが重視され、金利は低い一方、審査は厳格。その分、金利や返済条件は、企業の信用力に応じて柔軟に調整されます。

利用イメージ

  • 創業期〜アーリー:原則として難しい

  • ミドル〜レイター:黒字化・安定CFが見えてくれば現実的

  • 成熟期:最も低コストな資金調達手段

👉「低コストだが、最も借入ハードルが高いデット」

② 保証協会付き融資

信用保証協会が債務の返済に対して保証人となることで、銀行が融資しやすくなる仕組みです。無担保の場合は8,000万円が上限額。 担保を付けた融資であれば、2億8,000万円が上限となります(2026/1現在)。

借り手となる企業は、保証協会に対する信用保証料の支払いが必要です。 一方、銀行は貸し倒れリスクを抑える事ができるため、一般的に融資のハードルが下がります。
追加的なコストが生じるものの、スタートアップや小規模事業者にとっては有力な資金調達手段といえます。

金額の上限がある事から、成長資金として継続的に利用し続けることはできません。銀行との取引拡大を視野に、「まずは保証協会付き融資で実績を作り、プロパー融資へつなげる」のが定石です。

利用イメージ

  • 創業期:初期資金として有力

  • アーリー:運転資金の補完として活用

  • ミドル以降:成長資金としては規模・柔軟性に限界

👉 「創業初期の命綱だが、成長加速には向かない」

③ 公的金融機関の融資

ここでは、日本政策金融公庫などによる、政策目的に基づく融資全般を指してます。そのため、創業支援・研究開発支援など民間がリスクテイクしにくい部分への資金供給を目的とするケースが多くなります。

スタートアップが一度はお世話になる”日本政策金融公庫”は、民間の金融機関に比べると融資を受けやすい傾向にあります。その理由は、日本政策金融公庫が中小規模の事業者や創業を支援するために作られた金融機関であるためです。

金利や返済期限などの条件も民間に比べると有利になりやすく、かつ日本政策金融公庫からの融資を受けていることで、民間の金融機関からの信用度が高まる傾向にもあるなどのメリットもあります。

利用イメージ

  • 創業期〜R&Dフェーズ:非常に相性が良い

  • 事業立ち上がり前:売上がなくても使える場合あり

  • スケール期:金額・スピード面で限界

👉 「事業の立ち上げを支える“政策的デット”」

④担保付融資

不動産・売掛金・在庫・設備などの資産を担保にした融資。資産価値をベースに与信が行われる。企業全体の信用力や将来性だけではなく、「資産価値」を加味して与信が行われる点が、プロパー融資(無担保)との大きな違いです。

そのため、財務が赤字であっても、不動産を保有していたり一定の売上や在庫回転が確認できれば資金調達が可能になり得る一方、融資額は担保価値の範囲に制約され、資産のモニタリング(売掛管理・在庫管理)が厳格に求められます。

スタートアップにおいては、有形・準有形アセットが明確な場合に限定的に有効です。一方で、研究開発型・無形資産中心のスタートアップとは相性が悪いのが実情です。

利用イメージ

  • 売上・アセットを持つ企業向け

  • 製造業・流通・SaaS(売掛あり)で有効

  • 無形資産中心のSUには不向き

👉 「事業モデルと資産構造が前提となるデット」

⑤繋ぎ融資(ブリッジファイナンス)

繋ぎ融資は、将来確定または高い蓋然性で見込まれている資金流入までの「時間」をつなぐための短期融資です。返済原資は、事業の恒常的なキャッシュフローではなく、

  • 次回エクイティ調達

  • 補助金・助成金(NEDO・SBIR等)の入金

  • M&A対価

  • 大口契約の入金

など、特定イベントの実行を前提として設計されます。

そのためプロパー融資と比べて、期間は短期(数か月〜1年程度)、金利・手数料は相対的に高め、条件は「資金使途・返済イベント」が明確といった特徴を持ちます。
本質的には、「信用」ではなく「時間」を貸すデットと言えます。

利用イメージ

  • アーリー〜レイター:補助金・委託費前提で有効

  • アーリー〜レイター:エクイティ前後の資金調整に有効

  • レイター:M&A・大型契約前の一時資金として活用

👉 「将来の確定資金を前提に“時間を買う”デット」

⑥ ベンチャーデット(Venture Debt)

スタートアップ向けに設計された成長企業と親和性の高いデット。金利に加え、SO(新株予約権)等のエクイティ要素を組み合わせることが多い。

ベンチャーデットは、成長中のスタートアップ向けに設計されたデットであり、将来の事業成長や次回エクイティ調達を前提に与信が行われる点が最大の特徴です。

プロパー融資のように足元の黒字や安定的なCFが必ずしも前提条件とはならず、

  • 事業評価、将来CFの創出可能性

  • エクイティ調達の可能性、VC支援実績

  • 中長期の成長シナリオ

などを総合的に評価して設計されます。
プロパー融資と異なり、赤字や債務超過の状況でも借入ができる場合も多く、その分レンダー側がとるリスクが相応に高い事から、金利は相対的に高く、SO(新株予約権)など、エクイティ要素が組み合わされることが一般的です。

利用イメージ

  • ミドル〜レイター最もフィット

  • エクイティ調達と併用することで希薄化を抑制

  • 成長前提で設計されるデット

👉 「成長企業の資本戦略に組み込むデット」

まとめ

スタートアップにおける一般的なデット利用シーンとして、
シード・アーリーステージにおいては、日本政策金融公庫や保証協会付き融資で実績を作り、レイター以降を見据えた銀行のプロパー融資へつなげる。
また、ミドル以降の成長加速に向けた資金として、ベンチャーデットを戦略的に組み入れることがオススメです。

またディープテックスタートアップなど補助金の獲得を前提にしているスタートアップは、繋ぎ融資(ブリッジファイナンス)などの活用も有効です。

各デットの種類や利用タイミングなどについて、前より少しイメージが湧いたでしょうか。
次回記事では、これら法人融資のうち、「ベンチャーデット」を深堀していきます。「ベンチャーデット」の活用理由、ユースケースなどをより詳細にご紹介いたします。
皆様のデット調達準備の一助になれば幸いです!

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