ヘアカラー専門店「fufu」を全国に展開し、理美容業界のDXと構造改革を進めるFast Beauty。急成長を支えるのは、精緻なドミナント戦略と、それを下支えするファイナンスの「目利き」だ。同社CFOの岡本和幸氏は、三菱商事でのキャリアを経て同社に参画した際、ある確信を持っていた。それは「お金には色がある」ことだ。なぜ同社はFunds Startups(FS)を選んだのか。そこには、単なる「貸し手と借り手」を超えた、深い信頼に基づく関係性があった。レンダー選びの本質は「永続的な関係性」への投資──岡本さんは三菱商事でグローバルなファイナンスを経験された後、Fast BeautyにCFOとして参画されました。まず、スタートアップにおいてレンダー(貸し手)を選定する際、最も重視しているポイントを教えてください。岡本和幸(以下、岡本) 私はよく「お金には色がある」という話をさせていただきます。物理的にお金に色はありませんし、会計上はどのキャッシュも同じ1円です。しかし、経営という生き物の中で流れる文脈において、お金には明確に「色」が存在します。エクイティ(株式)の投資家を選ぶ際もそうですが、デット(負債)に関しても、私たちは「誰とパートナーになるか」を極めて真剣に考えています。一般的に、デットはエクイティに比べてドライな関係になりがちです。返済義務という制約がある以上、銀行やファンド側も一定の線引きをして接するのが普通でしょう。しかし、私はデットの方々との関係性を、もっと永く続くものにしたいという大前提を持っているんです。──「デットの関係を永続的にしたい」というのは、返済という終わりがある負債の性質とは逆行するようにも聞こえます。岡本 おっしゃる通り、デットには返済期限という有限性があります。でも、私たちの事業は続いていきますよね。だからこそ、一時的な「資金の貸し借りの関係」で終わるのではなく、我々の挑戦を深く理解し、同じ目線で考え、長く支え、共に戦い続けてくれるパートナーと取引をしたいと常々考えています。Funds Startups(以下、FS)さんとの取り組みも、当初は「1年」という非常に短い期間の融資でした。正直に言えば、私自身も自問自答しました。1年という有限な期間で、かつ銀行よりは割高なコストを支払ってまで、取り組む必要があるのか、と。でも、結論は「YES」でした。お互いを深く知った上で、将来的にさらに大きな壁にぶつかった時にも背中を預け合える、そんな関係性をFSさんとなら築けると思い、ご一緒することに決めたんです。スタートアップ業界を「変える」という視座への共鳴──多くの選択肢がある中で、なぜ最終的にFunds Startupsが選ばれたのでしょうか。岡本 一番の決め手は、FSさんが持っている「視座」の高さでした。他のレンダーの方々とは、見ている景色が違ったんです。単に「融資をしてリターンを得る」という次元ではなく、「日本のスタートアップ業界を変える」「日本を再び成長させる」という野望を、エコシステムの構築から逆算して語っていました。初めてFS代表の前川さんとお会いした時のことは、今でも鮮明に覚えています。問いの深さ、そして返ってくる言葉の視座の高さに、震えるような感覚がありました。ディスカッションを始めて30分もしないうちに、リスクとリターンバランスのお互いの落とし所が見えてきた。個社ごとにテーラーメイドで条件設計が可能なフレキシビリティと、チームとしてのファイナンスリテラシー、リスクをミリ単位で見極めた上でリスクテイクする「覚悟」と「志」が見え隠れしました。これまでこの視界を持った方はベンチャーデットの業界では会った事が無く、これなら、我々が挑戦することで、後ろにいらっしゃるLP(出資者)の金融機関の皆さんにとっても、ベンチャーデットにおける新しい審査モデルやメカニズムを提示するきっかけにできるかもしれない。その可能性に、強く惹きつけられたんです。──融資実行後のやり取りについても、一般的なレンダーとは異なっていたのでしょうか。岡本 違いましたね。よくあるのは、融資が実行されれば仕事は終わりという感じで、あとは期日管理だけになります。でもFSさんは違った。言葉を選ばずに言えば、僕らにさらに高い成長を求めてきたんです(笑)。我々も、エクイティのキャピタリスト以上に高頻度でコミュニケーションを取り、「これ、一緒にやりませんか」「この提携先はどうですか」という会話が次々と出てくる。融資条件の交渉においても、取れるリスクと取れないリスクの境界線が非常にシャープで、事業フェーズによってリスクレベルや質が異なるスタートアップという制約条件の中で、コベナンツ(資金調達する際に契約書に盛り込まれる特約条項)の設計を含めて極めて秀逸で、ビタッと着地点を見つける手腕には、リスペクトしかありません。資本コストを「援護射撃」というリターンで正当化する──一方で、ベンチャーデットファンドは銀行融資に比べれば資本コストが高いという側面があります。社内や既存株主に対して、このコストをどう説明されたのですか。岡本 期間に対して「高いのは高い」とはっきり伝えましたし、社内でも当然議論になりました。しかし、FSさんが入ったタイミングは僕らのデットキャパシティがとても流動的だけでなく、銀行融資での調達可能額が見極め難い状況で、リスクテイク頂くタイミングであった事。そして単なる資金供給以上の「付随的」なメリットも強調しました。FSがリードとなって道を切り拓き、バンクフォーメーション(メインバンクを中心とした安定的な融資体制を築く戦略)の構築をサポートしてくれる。そのインパクトを考えれば、金利の差分は十分に価値のある投資として正当化できると判断しました。実際、この1年を振り返って思うのは、提供頂いたサポートの数々とリスクテイクを踏まえると、金利リターンの利率なんて安すぎるんじゃないか、ということです。──ありがたい言葉です。岡本 それだけFSの皆さんの動きが、レンダーの枠を超えすぎている。新しい提携先のご紹介、さらには他の金融機関との面談にまで同席して、まるで「自分たちの事業」のように僕以上に熱っぽく語ってくれる。特に担当の小原さんの熱量はすごかった。銀行とのコミュニケーションの場でも、「CFOの私より喋ってるんじゃないか」という場面もありました(笑)。常に泥臭く動いてくれる。その姿を見て、スタートアップ側としてはこれほど心強い応援団はいないと感じました。FSさんは銀行が持つ”匂い”やタイミングを、肌感覚で熟知している。その情報をストックし、共有しながら、スタートアップが取れる最先端の選択肢を常に広げてくれている。実は私もそれなりにベンチャーデットを開拓し、情報は持っているつもりでしたが、足元にも及びませんでした。定性的な「パッション」を定量的な「信頼」へ翻訳する──冒頭でお話しいただいたように、FSが供給する資金には「色」があったということですね。岡本 私は「お金には色がある」のと同様に、「パートナーにも色がある」と思っています。Fast Beautyは「優しい事業」を作りたい。その「優しい事業」を作るためには事業を僕らと同じ目線で支え、戦い続けてくれる「優しいパートナー」が必要で、バランスシートの右側(アセット)を創る僕らの仲間たちが安心して挑戦するためには、バランスシートの右側(負債・資本)から流れてくる「お金」も優しく温かいものでなければならない。ドライで無機質な、あるいは短視眼的な利益だけを追う資金を混ぜてしまうと、重要なタイミングや苦しい場面で事業の温度感まで変わってしまう。だからこそ、調達の局面では高橋(CEO)と共に、必ず調達先のトップと会い、相手の「色」を見ます。「色」は目に見えず、感じる事であるからこそ、その都度二人で答え合わせをし、「色」に濁りがない事を確認して進めるというステップを踏んでます。幸いなことに、今のところ僕らは目利きを外しておらず、一貫してFSさんのような「いい色」の方々に支えられており、それ故に事業作りに余計なノイズが入ることがありません。──改めて、これからのスタートアップCFOに求められる役割について、岡本さんの考えを教えてください。岡本 CFOの役割の本質は、「翻訳」にあると考えています。代表が持つ「まだ実現していない夢」や、現場のメンバーが持つ「言語化できない情熱」。それら定性的なエネルギーを、事業計画という定量的な数字に翻訳し、レンダーや投資家の「信頼」に変えていく。そして、調達する際には、目に見える「お金」だけではなく、「応援」を載せて貰えるように全力を尽くします。この翻訳の精度と微調整が、スタートアップの成長速度と色を決定づけます。だからこそ、数字という共通言語に落とし込み、レンダーや投資家がリスクを取れる状態にまで加工する必要がある。スタートアップの資金調達は、常にチキンレースで不安との狭間にいます。そんな孤独な戦いになりがちなCFOにとって、FSさんのような、同じパッションを持って伴走してくれるパートナーがいることは、何にも代えがたい財産です。スタートアップの熱量を理解しながら、金融機関側の論理も熟知している。このパートナーシップがあれば、これからの日本のファイナンスはもっと面白くなるかもしれません。──最後に、今後の展望をお願いします。岡本 これからも変わらず、FSの皆さんには援護射撃と、ベンチャーデットマーケットの開拓者であり続けることを期待しています。そして、私たちもそれに応える成長を見せていかなければなりません。FSの皆さんと共に、私たちは「fufu」という事業を通じて、ベンチャーデットの世界を広げつつ、新しいファイナンスの形を通じて証明していきます。インタビュアー:前川寛洋(Funds Startups CEO)、小原満美(Funds Startups プリンシパル)デザイン:國井優史撮影:水野綾香(Funds)執筆:海達亮弥(Funds)