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navigate_next前例がないから、やる。スタートアップM&Aファイナンスの新境地
2025/10/29
Interview

位置情報・宇宙ビジネスを展開する東京大学発のディープテック企業で、「世界中の位置情報データを分析する」を掲げるLocationMind。彼らが描く成長戦略の舞台は、当初から世界市場にあった。しかし、10兆円規模を誇る巨大な米国市場を前に、ゼロからの事業立ち上げではあまりに時間がかかりすぎる。
この成長の壁を突破する最速の一手が「クロスボーダーM&A」だった。そのためには資金調達が必要不可欠となる。しかし、スタートアップのM&A、しかも海外となると、既存の金融機関ではなかなか対応ができないのが現実。
そんな課題があるなかで、ブレイクスルーとしたのがFunds Startupsだった。ここでは、この難局を乗り越えた、LocationMind CFO 小川 竜馬氏と、Funds Startupsの投資担当者である佐々木 雅人の二人に話を訊いた。
目次
最速の成長手段としての「M&A」
FSは「どうすればできるか」から考える
M&Aは「資金調達」になる
Funds Startupsについて
最速の成長手段としての「M&A」
──まず、LocationMindがM&A、それもクロスボーダーM&Aを決断した背景を教えてください。
小川 我々は、東京大学発のスタートアップとして、位置情報ビッグデータをAIで解析する技術を軸に事業を展開しています。
スタートアップの成長戦略というと、一般的にはエクイティファイナンスを重ねて、自社で特定のプロダクトを磨きこみ、ビジネスを成長させていくイメージが強いかもしれません。
近年、M&Aによる戦略は加速してきましたが、日本国内の企業が日本国内の企業を買収する「in-in」の案件がほとんどです。
しかし我々は、当初からグローバル市場を獲りにいくことを目指していました。その最速の手段として、自社だけではなく、市場に顧客基盤を持つ企業を買収するM&Aも視野に入れていました。
つまり海外の企業を買収する「クロスボーダーM&A」というものです。

この理由は大きく3つあります。
1つ目が「北米市場」です。我々が戦う位置情報サービスは、現在グローバルで10兆円、10年後には80兆円に達すると予測される巨大市場です。そして、その半分を米国が占めている。
この巨大マーケットに進出するには、ゼロから拠点を立ち上げるよりM&Aが合理的だと考えていました。
2つ目が「事業の優位性」。今回買収した、位置情報ビッグデータビジネスを展開するアイリス(Irys, Inc.)は高い利益率を上げている。
つまり、米国市場はそれだけ成熟しており、マーケットにフィットしたビジネスモデルが確立されているということです。
最後に「シナジー」です。我々は位置情報の分析技術に強みを持つ一方で、買収先は位置情報データの質と量に強みをもつデータ販売企業です。
我々のビジネスモデルですと、上流部分を抑えられるM&Aとなるため、GPSビッグデータを自社グループで保有できたシナジーは大きいと思っています。
また、そのデータをこれまで通り買収先の販売網を使ってデータ販売を強化するのもいいですし、LocationMindを通し、より付加価値を高め世の中に還元することもできるので、非常にシナジーが期待できるM&Aであると思いました。
加えて、日米間の市場評価額の差(マルチプルギャップ)を利用し、割安な価格での買収が可能でした。そのため、我々の技術を組み合わせれば、さらに爆発的な成長が見込めると判断し、M&Aに至りました。
──そのM&Aを実現するための資金調達では、どのような課題がありましたか?
小川 利益が出ている事業を買う以上、レバレッジを効かせるためにデットファイナンスを検討しましたが、これが非常に難しかった。

その理由の1つが「海外案件」であること。そして、2つ目が「資金規模」の問題です。数百億円規模なら、海外のM&Aでもメガバンクが対応できますが、そうでない規模ではチーム組成して動くのが、なかなか難しいこともあります。
一方、メガバンク以外では規模感はマッチしても、海外案件のデューデリジェンス(DD)の観点で進まないケースもあります。ちょうど“エアポケット”にはまってしまう形ですね。
そんな中で、我々と一緒に挑戦してくれたのが、Funds Startups(以下、FS)でした。
FSは「どうすればできるか」から考える
──なぜ、FSを選ばれたのでしょうか。
小川 2つあります。1つは複数の銀行やファンドに当たることなく「ワンショットで資金が出る」こと。
そしてもう1つが「M&AのDD(デューデリジェンス)を徹底的にやってくれる」と感じたことです。特に佐々木さんの存在が大きかった。
実は、FSに相談に行った時点では、佐々木さんがいるとは知らなかったんです。話を進める中で担当者として出てきて、「え、佐々木さん!?」と(笑)。
彼とは前職のSMBC日興証券時代に、偶然にも今回と同じ日米間のクロスボーダーM&A案件を一緒に担当した仲でした。
ニューヨークと東京で、オンラインでやり取りしながら案件を進めた経験があったんです。
佐々木 私も本当に驚きました。当時、私はニューヨークにいて、小川さんは東京。まさかこんな形で再会し、また同じテーマでご一緒するとは思っていませんでした。

私のキャリアは投資銀行から始まり、PEファンドを経てスタートアップの世界に飛び込みました。
大企業やファンドの仕事も刺激的でしたが、既存の金融機関の論理ではどうしてもリスクが取れず、本当に面白い案件、世の中を変える可能性を秘めた挑戦が俎上にも載らない現実を目の当たりにしてきたんです。
FSには「スコープがないからやらない」ではなく、「どうすればできるか」を考えるカルチャーがあります。
既存の金融機関が見送るような、前例のない案件にこそ価値がある。まさに今回のディールは、FSがやるべき仕事だと直感しました。
そして、何より過去にご一緒した経験から、小川さんの持つディール遂行能力と事業への深い知見を信頼していました。
この複雑な案件を最後までやりきれるのは、小川さんとだからこそだと確信していましたね。
──ディールを進める上で、特に印象的だったことは何ですか?
小川 やはり株主との利害調整ですね。デットファイナンスを出すFSと、エクイティを入れている既存株主とでは、求めるものが真逆です。
つまり、デットの投資家はリスクを抑えたい、エクイティの投資家はアップサイドを最大化したい。この調整は本当に大変でした。

それでも最後までやりきれたのは、佐々木さんをはじめFSチームが、ただのレンダーではなく、事業を深く理解し、同じ目線でリスクを分析し、コミットしてくれたからです。
彼らとの信頼関係がなければ、途中で心が折れていたかもしれません。
佐々木 FSの内部でも、この案件をどの様に評価すべきなのかという点については、方法論まで立ち返って徹底的に議論しました。
我々が向き合ったのは、事業計画に一定のストレスを掛けるレンダー視点のバンクケースだけではありません。
LocationMindの高度な分析技術が、買収先の持つ広大な顧客基盤と組み合わさった時、1+1がどうすれば「3」、あるいは「5」になるのか。
その蓋然性を、技術・市場・組織の観点から立体的に分析する必要がありました。
一般的なデットの考え方では測れない、将来の事業成長の予見性をどう評価するか。社内でも「本当にこのリスクを取れるのか?」という声がなかったわけではありません。
しかし、我々のミッションはまさにこういう挑戦を支えること。チーム全員で腹を括り、「やろう」と決断しました。
M&Aは「資金調達」になる
──M&Aを経て、会社にはどのような変化がありましたか?今後の展望も教えてください。
小川 M&Aによって、我々の見えている景色は全く変わりました。利益体質の会社を買収できたことで、外部資金調達に頼らず成長資金をグループの中で再投資できること、これは実質的な「資金調達」と同じ効果があります。
そして何より大きいのが、情報の流入経路が変わったこと。
この一件で「LocationMindはクロスボーダーM&Aをやりきる会社だ」という認識が広まり、海外のブティックや事業会社から直接、次の案件の話が舞い込むようになったんです。

これは、守りに入っていたら絶対に得られない資産です。今後は、今回獲得した基盤を元に、3つの戦略を加速させます。
1つは、我々にしか作れない「地理空間の生成AI」の開発。2つ目は、日本のみならず戦場を常にグローバルの視点で経営すること。
そして3つ目が、これらの成長を加速させるための更なる「M&A戦略」です。世界にはまだ我々が知らない、しかし組み合わせれば絶大なシナジーを生む企業が眠っているはずです。
──最後に、FSに期待することを教えてください。
小川 スタートアップにとってM&Aは、もはや特別な選択肢ではなく、成長戦略の重要な一部です。
しかし、そのファイナンスには依然として高い壁がある。FSには、その壁を壊す先駆者になってほしい。今回のディールを通じて、FSはそれができる存在だと思いました。
今後、FSが「M&AファイナンスといえばFS」という地位を確立すれば、日本のスタートアップエコシステム全体が、さらに上のステージに進められる。
我々もその筆頭となる成功事例として、世界の市場を走り続けたいと思います。
佐々木 小川さんのお言葉、非常に嬉しく思います。今回のディールは、我々FSにとっても大きな挑戦であり、成功体験となりました。

スタートアップの成長戦略が多様化する中で、エクイティ一辺倒ではない、デットやM&Aファイナンスといった選択肢がいかに重要か、改めて認識させられました。
我々は、金融の論理だけで判断するのではなく、スタートアップの持つポテンシャルと情熱を信じ、事業に寄り添ってリスクを取る。
その姿勢を貫くことで、LocationMindさんのような挑戦を一つでも多く世の中に生み出していきたい。
日本のスタートアップエコシステムを、ファイナンスの側面から変革していく。それが我々の使命だと考えています。
Funds Startupsについて
Funds Startups株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:前川寛洋)は「社会的インパクトを創出するスタートアップが、最も理想的な成長を遂げられる仕組みを開発する」をミッションに据え、ファンズ株式会社の100%子会社として2023年12月に設立されました。Funds Startupsでは、Funds Venture Debt FundのGPとして、ファンド運営ならびに金融機関へのベンチャーデットに関する支援を中心に行います。今後については当事業を中核としつつも、スタートアップ専門の投資銀行部門のような役割として、スタートアップの資金調達手段の多様化や環境整備等も手掛けていく予定です。
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